料理の「は」、囲碁の「と」


何かの専門的な本には専門用語が頻繁に出て来て、素人に疎外感を与えがちというのはよくあることだが、
その「専門用語」が名詞のみならず助詞にまで及んでいる例が面白いので書いておく。

それは料理における「は」と、囲碁における「と」。

 1.キャベツ芯をとって短冊に切ります。

という際の、あの「は」の使い方はちょっと特殊に思う。
普通だったら「キャベツの芯をとって」とくるのでは。
それが、いきなり「キャベツ」。
こちらがもうキャベツがそこにあることは知っているという前提で話している。


この言い回しに違和感を感じるということは、
やはり「は」という助詞には「既知」という意味が存在するのだろうか。
キャベツのことは今いきなり言われたのに「は」とくる物だから、
「え、ちょっと待って」という焦った気持ちになるのではなかろうか。


また、囲碁の本などに出てくる、

 白3打って黒の頭をたたきます。

というような言い回し。
(碁盤の図解の中で、目印として白を打つ順番が「1」「2」「3」と書いてあったりする。)
普通なら「白を3に打って」となると思うのだ。

これがなぜ「と」という言い回しになるのか私には分からない。
(これも助詞「と」のヒミツに迫る糸口とかになるであろーか。)

いずれにしろ「は」も「と」も、「省スペースのために発展した専門用語」という感じはする。

 

あさきゆめみし

「あさきゆめみし」があんなにも人気があるのは作家自身が源氏物語をとても好きだからだと思う。
出版社の企画で、面白いとも思っていないのに権威だからということでしかたなく描かれた(のかもしれない)源氏漫画とは違うような気がする。

「もりの散歩道」さんは「あさき…」に出てくる構図と源氏物語絵巻に出てくる構図の類似を指摘しているが、もう一つ同様の例をあげる。

「末摘花」の巻は源氏物語中面白い「をこ話」としての位置をしめていて
文体が他の巻に比べて軽くて読み進み易い。
「あさき」においてもそれは同じで、「末摘花」のコマ運びはリズミカルで絵のタッチも軽く、ユーモラスな雰囲気が出ている。
(源氏の顔の描き方もギャグ化しているし。)

大和和紀も、原文の文体が他の巻と違うとやはり思っているのだ

それで、彼女は絵巻と同様の構図を使ったり文体に合わせて漫画の雰囲気を変えたりすることで自分の漫画の権威を高めようとしているわけではなく、
そういうのを楽しんでやっている。

だから売れる。と思う。

 

らりるれろ

ふと疑問に思うのが、「ヘボン式ローマ字」が定められたとき、
なぜ「らりるれろ」に「R」を採用したのだろう。
当時の日本語の「らりるれろ」の発音は「R」に近かったのだろうか?

あるいはヘボンの母国、英国で当時「R」を「らりるれろ」に近く発音したのだろうか??

 

「めくら草紙」

太宰治の「晩年」に入っている「めくら草紙」という題は
清少納言の「枕草子」のパロディの題だと思う。
根拠と言ってないが、そうだろう。

 

「べし」を訳すべし
 

 突然だが「べし」の「当然・適当」に当たるのの訳し方は、変じゃないだろうか。
「〜するのがよい」「〜するはずだ」っていうの、なんとかならないものか…。
 と考えて思いついたのが「〜ものだ」と「〜ことだ」という訳。
例えば、「よく励むべし」は「よく励むのがよい」ではなく、「よく励むことだ」、
「夏は暑かるべし」は「夏は暑いはずだ」じゃなくて、「夏は暑いものだ」とする。
すっきり訳せるのではないだろうか。

 

憶測「堤中納言」の作者は

 これは憶測の項目。
 「堤中納言物語」の作者はティーンエイジャーだったのではないだろうか。当時、14〜5才だった人。
 あの話は読むのがどうにも難解だが、それはもしかして、作者が下手だったからなのでは。
 省略しちゃいけないところを省略したり、突然場面が飛んだり、キャラクターの名前を間違えたり。
 そういうは、どこかで見覚えがある、何かに似てると思っていたが、思い当たった。

 ティーンエイジャーがいきおいで書いちゃったマンガに似ているのだ。
とても面白い作品に感動して感化され、どうしてもその感動を表したくて、まねして書いちゃった奴。
 コマはこびが飛ぶ、キャラを間違える、ストーリーは意味不明、でも、発想は面白くて若い輝きのパワーにあふれてる…、そんな奴。

 「堤中納言」を読んでいて感じる、あの気恥ずかしさとかエネルギーに満ちた感じは
「源氏物語」を読んで感動して感化されて、自分も書かずにはいられなくなった十代のものに重なる。
 「源氏」の絶妙な省略に唸って、真似してヘンなとこ省略しちゃったり、まだちゃんと何て名前にするか決めてなくて、
色いろな名前にしてみたり。全体に書きかけで…というより誰にも見せるつもりはなくて自分の楽しみのためにせっせと書いてたのでは。
 最後の章の「冬ごもる…」も、「冬ごもる式部卿宮」とか「冬ごもる二の姫」などの、まだタイトルを決めかねているところだったりして。


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